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「好きと言って」
by.リカコ様
「セリス、聞きたい事があるのだが……」
シャナンは戦略会議が終わった後、セリスが一人になるのを待って聞いた。
「シャナン、どうしたの?」
「最近、わざと私とラナが一緒の配置になるように戦略を組んでないか?」
「うん、そうだけど?」
シャナンはなんでもない事のように言うセリスに、首をかしげる。
「それは、私をラナの保護者にしているということか?おまえたちはその、恋人同士なのだからな」
それを聞いて、セリスは笑い出した。
「何言ってるの、シャナン。僕たちは単なる友達だよ、昔から。それに、僕がティニーと恋人同士になったの知らなかったんだ」
「……いつの間に」
「気づかないシャナンの方が不思議だよ」
「そうなのか?」
「そうだって。シャナンは本当にそういう方面の事に鈍いよね」
「……だからこの年になってもまだ恋人がいないのだと言いたいのか?」
シャナンはちょっと自虐的にいってみた。
「ごめん、そんなつもりはなかったんだけど。だけど、ちょっと心配にはなるよね。あんなに積極的だったパティの事、レスターに持ってかれちゃったし」
「私はパティを特別好きだとは思ってなかったぞ」
シャナンはちょっとむっとする。
「だったらいいんだけど。…それでさ、ラナの事なんだけど」
「ラナがどうした?」
「シャナン、ラナの事どう思う?」
「……かわいいのではないか?おまえとうまくいかなかったのが不思議だが、ラナならすぐに恋人がみつかるだろうな。うむ」
「……シャナン。他人事みたいにいわないでよ。僕はラナとシャナンがうまくいったらいいなって、言いたかったんだけど」
「わたしとラナがか?……私は彼女のおしめを変えた事もあるんだぞ?」
逃走生活の間、オイフェと共に子供たちを育ててきたシャナンにとって、セリスの言葉はただ驚くしかなかった。
「気分は父親って所なの?」
「父親は失礼だろう。私は兄ぐらいの気持ちでだな……」
「ごめんごめん。年の事は禁句だよね」
「………………」
「それじゃさ、今度からラナの事一人の女性として見られないかな?」
「何故そんな事を言うのだ?恋人一人自分で見つけられないように思われているのなら、それは余計なお世話というものだ」
シャナンはセリスをじろりと睨む。
「だってさ、ラナがシャナンの事好きだっていうから。シャナンも気づいていると思ったのに。シャナンが僕に声かけてきたのも、てっきりその相談だと思ってたから、見当違いで僕もびっくりしてるんだよ?」
「私はおまえが恋人をほっておくのはどうかと注意したかったのだが……。……まて、ラナが私をか!?」
シャナンは事態をようやく飲み込み、目を丸くする。
「ラナが、好きな人がいるから自分の事は気にしなくていいって言ってくれて。それで問い詰めたら相手はシャナンだって……。僕たちは親友同士だから、打ち明けてくれたんだと思う。本当は黙ってた方がいいのかなって思ったんだけど、シャナンがその調子じゃ、なんだか先が真っ暗に見えたから」
「私たちは、12も齢が離れているのだぞ!?」
「でも、パティだってシャナンの事好きだったし、ラクチェだって……」
「ラクチェもか!?」
「それも知らなかったの?目眩がしてきた……。ラクチェはヨハンと恋人同士だから大丈夫だよ」
「それくらいは私だってわかるぞ!!」
「でも、ヨハンが軍に加わるまではシャナンが好きだったんだよ?」
「……………」
シャナンはだんだん落ち込んで来た。……まったく気づいていなかったからだ。
「シャナン、元気だしてよ。ほら、シャナンは女の子に人気があるってことじゃないか!!それにラナはまだフリーだし、チャンスなんだよ!?」
セリスはごまかし笑いをする。
「その場合、私の気持ちはどうなるのだ……?」
「ラナの事かわいいっていったじゃないか、シャナン」
「うむ……」
シャナンは少し赤くなる。
ラナの事は今までセリスの恋人だと思っていたし、自分にとっては妹ぐらいにしか考えてなかったのだが……。
「ね、シャナンちょっと考えてみてよ。ね?」
シャナンは真剣にラナの事を考えてみる事にした……。
それから3日。
シャナンはどうしてもラナが自分を好きだというのはウソのような気がしてきた。
そして、不器用なシャナンがした事は……。
「ラナ…そのセリスから聞いたのだが……」
戦闘の合間、シャナンはラナをつかまえ、言った。
今はマンスターを取り戻すための戦いの最中。こんな話をしている場合ではないのは百も承知だったが、どうしても聞かずにはいられなかったのだ。
「セリス様ったら……」
ラナはそうつぶやいた後、言った。
「シャナン様、ごめんなさい、その事でしたらウソなんです!」
やっぱり……。
シャナンはそう思うと同時に、ちょっぴりがっかりした。
「セリス様はティニーの事が好きなのに、わたしに気がねして、相思相愛なのにティニーと恋人同士になれないでいたんです。だから、少し気をきかせて、わたしには他に好きな人がいるんですって、言ってしまったんです。でも、そうしたらそれは誰だって問い詰められてしまって……」
ラナは済まなさそうにシャナンを見上げる。
「わたし、シャナン様なら大人だからちゃんと話をしたらわかってもらえると思ったんです……。ごめんなさい、こんな事になってしまって……。最近セリス様ったら気をきかせたつもりで、すぐにわたしたちを同じ場所に配属するんですもの……。シャナン様だって困ってしまいますよね……」
ラナはそう言ってうつむいた。
「……いや、気にする事はない。しかし、オイフェでもよかったのでは……?」
「そんな、フィーに殺されちゃいます。あ、シャナン様知らなかったんですか!?」
……またこれか。
シャナンはため息を付く。
「……後でオイフェを問い詰めないといけないようだ」
「そうですね、親友に黙っているっていうのは、いけないですよね」
ラナがにっこり微笑み、この話はとりあえずここで終わる事になった。
「オイフェ、フィーの事をラナに聞いたのだが……」
マンスター城を解放し、セリス軍がしばらく駐屯する事が決まった晩だった。
「はは、もう伝わってしまいましたか。いや、私もそろそろ年ですから、こう若い子に一途にせまられてしまいますとねえ……」
「……私はおまえののろけ話を聞きに来たわけではないのだが」
「はは、これはすみませんでした。いえ、私もあなたにすぐ報告しようとは思ったのですが、ついうっかりフィーと一緒にいるのが楽しくてですねえ……」
結局口べたなシャナンは、うんざりする程のろけ話を聞かされたのだった。
「……それで、シャナン様あなたの方はどうなのですか、ラナとは?」
いいかげん逃げ出そうかと思っていたところで、ようやくオイフェはシャナンに話を振った。そこでシャナンはたどたどしく今までの話を語って見た。
「ラナ、なかなか良い縁談ではありますな」
「縁談?」
「そうでしょう。ヴェルダンの王子ジャムカ殿の娘で、ユングヴィの公女エーディン様の娘ですよ。これ以上王子であるあなたのお相手にふさわしい相手もないのではないかと」
「……考えた事もなかったな」
「あなたらしいですよ、シャナン王子。私などは、セリス様とラナの組み合わせをずっと家柄的に申し分ないと考えていたのですから。しかし、セリス様のお相手がティニーで良かったですよ。ティニーならば、フリージとドズルの血を引いた高貴な家柄の娘。ラナに負けず劣らずセリス様にふさわしいでしょう」
オイフェはかなり重度の差別主義者だった……。
「いや、あなたがパティとくっつきそうになった時はこれでも心配したのですよ。なにしろパティの父親は平民で、その上盗賊のデュー殿ですからな。その上、本人の職業までもが盗賊ですよ?イザークの王妃として迎えるにはどうかと……。その点レスターとの組み合わせは、ヴェルダンはもともとは蛮族の国ですからな。盗賊といえども公家の血を引くパティは喜んで迎えられるはずではないかと……」
「……おまえと話していると時々頭が痛くなってくる……」
シャナンは額を押さえる。
しかしオイフェはしゃべる事をやめなかった。
「それでですな、シャナン王子。戦略的にも、将来のヴェルダン王の妹姫を妻に娶るのは良いことではないかと……。ラナは特別美人というわけではありませんが、気立てもよいし、なかなか愛らしい娘ではありませんか」
その通りなのだ。しかし……。
「シャナン王子、この戦争が終わりイザークへ帰れば、必ず王妃を迎えなくてはなりません。どうせ政略結婚をしなければならないのなら、ここは一つ顔もわからないどこかの娘を選ぶよりは、ラナを妻に迎えるべきではないかと。ラナにしても、イザークは生まれ故郷。気心知れたシャナン王子の妻として生涯を送るのも、悪くない選択だと思いますよ」
オイフェの恋愛観にはいちいち偏見が入っているのだが、まともな事も交ざっている。
「その点私はシアルフィ出身、フィーはエッダ家のですね…シャナン王子どうされたのです?」
「いや、ちょっとおまえの話を真剣に考えて見ようと思って、な……」
シャナンはまたのろけ話をきかされそうだったので、あわてて逃げる事にしたのだった。
シャナンは考え抜いた。
そして……。
次の戦闘が始まる前に決断を下した。
「…ラナ、そのだな……私はおまえを妻に迎えたいと考えているのだが……」
しどろもどろになりながら、ラナに言った。
「シャナン様、オイフェ様に何か言われましたね」
ラナはじっとシャナンを見つめた。
「うむ…多少はな…だがしかし……」
シャナンはたじろぐ。
「シャナン様、この話お断りさせて頂きます。わたしは、そういう不純な動機の方の所に嫁ぐ気はありませんから」
少し怒ったような口調でラナに言われ、シャナンは無理もないと思う。
「すまぬ……おまえを怒らせる気はなかったのだが……」
「そんなのわかってます。だけど、シャナン様ってどうしてそんなに鈍いんですか?」
「……そのようだな」
「少しはヨハンさんやセティさんを見習って下さい!!」
意外な名前を急に上げられ、シャナンは戸惑う。
「あの二人を…か?」
ヨハンはラクチェの恋人だ。そして、セティといえば仲間になったばかりの人物なのだが、リーンに一目ぼれしたらしく、さすがのシャナンも気づかずにはいられない程、強烈なラブコールを彼女に送っている。
「それじゃ、シャナン様頑張って下さいね」
ラナはそう言い残して行ってしまった。
「シャナン様……わたしは確かにヨハンとセティを見習って下さいと言いました」
あれから3日。今度はシャナンがラナにつかまっていた。
「だから、私なりに見習ってみたのだが……」
「だからって、どうしてそう、あの二人の悪い所だけまねするんですか!!」
「いや……その私はどうも口べたでな。出来る事といったら……」
「だからって、人の後をずっとついてくるのが正しい事だと思いますか?」
ラナのス〇ーカーのような行動をシャナンはとっていたのだった……。
「……すまぬ」
「シャナン様の熱意はなんとなくわたしにも伝わってきました。でも、それじゃ駄目なんです。今度はスカサハにでも聞いてみてください。彼ならきっとちゃんと相談に乗ってくれると思いますから」
シャナンはおとなしくスカサハの所へ行く事にした。
「シャナン様、それはラナが怒っても無理ないですよ」
スカサハは必死になって笑いを堪えていたが、油断すると笑いが口からこぼれ落ちるようだった。
「しかし、ヨハンとセティを見習えと言われたのだぞ!?私に出来る事といったら……」
「あの二人のいいところって、女の子に好きだってはっきり言える所ですよ。シャナン様も素直に、『ラナ好きだ、嫁になってくれ』って言えばい良かったんですよ」
私がラナを好き!?
「あれ、もしかして自覚なかったんですか?最近シャナンさま暇さえあればずっとラナのこと見てたじゃないですか。それに、好きでもない女の子の後、わざわざずっと追っかけてたんですか?相手なら、ラナでなくても他にいくらでもいるのに」
「うっ………」
シャナンはかなりショックを受けていた。
私はラナが好きだったのか……?
「シャナン様、本当に鈍かったんですね……。同情します」
追い打ちをかけられ、シャナンはガクリとする。
「だが……私はあんな事をして、もうラナには嫌われてしまったかもしれないな」
「そこが女心の難しい所です。シャナン様、嫌いだったら、僕の所に行けなんて言いませんよ」
少し希望が見えて来た。
「もう一度、ラナに会って来る……」
「がんばって下さい、シャナン様!」
ユリアとの恋愛相談でずっとラナのお世話になっていたスカサハは、これで恩返しが出来たと一人微笑んだ。
「…ラナ…私はおまえが好きなようだ……」
シャナンは今度こそ間違えないようにと緊張していた。
「ようだ、ですか?」
ラナはシャナンをじっと見つめる。
「いや…好きなのだ。私の嫁になってはもらえないだろうか……」
シャナンは耳まで赤くなりながら言った。
「はい、シャナン様。わたしもシャナン様の事が好きです。もう、ずっと前から……」
ラナは微笑んでシャナンに抱き着いた。
「!?待て、前からというのは……」
シャナンはラナの背に腕をまわし、眉をひそめた。
「子供の頃からです。みんなわたしとセリス様が仲がいいから、誤解してたんです。めんどくさいから、セリス様と二人で誤解させておこうって約束してたんです」
「じゃあ、セリスが私に言った事は……」
「本当だったんです。だけど、シャナン様あの時はわたしの事好きだって思ってなかったんですもの」
「……私は騙されたというわけか」
シャナンは頭が痛くなってくる。
「恋愛って、駆け引きなんですよ?」
ラナはクスクスと笑った。
「わたし、ずっとシャナン様にわたしの事好きになって欲しかったんです」
「……良かったな、その通りになって」
シャナンはため息を付く。
「ええ。セリス様にお願いして本当に良かったと思います」
「……何故そこにセリスが?」
「シャナン様と一緒にいられるように、戦闘配置を組んでもらえるようにしたんです。あと、リーンとナンナを遠ざけて下さいって」
「それは………」
「ライバルは少ない方がいいでしょう?本当は黙ってようかと思ったんですけど、それじゃ不公平だから……。わたしだってこんなにシャナン様の事が好きなんですよ?」
シャナンは頬を赤らめる。
「騙されたのは、面白くないが……それでも憎めないと思ってしまうのが恐ろしいな」
「それが恋ってものです」
確かに、その通りなのだろう。
しかし、ずっと主導権を握られたままなのは悔しかったので、シャナンはそのままラナを抱きしめ、そっと唇を重ねた。
こうしてシャナンは、誰よりも幸せな花嫁を手にいれたのだった。
うっふっふっふっふ。
リカコ様のHP「るんるんるん♪」のカウンタ3000をグワシと踏んで書いていただいたシャナン×ラナ創作でーす。わーいわーい。
シャナンのボケっぷりがかなりグー。したたかなラナもステキ。シャナン×ラナのカップルは、一見「シャナンがラナを守る」風で実は「ラナにいいように振り回されているシャナン」がいいなー、と勝手に思っていたので、なんかバッチグウな創作で狂喜乱舞です。
そしてオイフェ。君はきっといい政治家になるよ(笑)
リカコ様、本当にありがとうございましたvvv
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