「最近、ようやく進むべき方向が解かってきました。
売り上げを伸ばすとか企業を大きくするとかということではなく、
良い菓子を作ること、それに尽きます」
四代目になる万通社長はそう話す。
より良い菓子作りのためには企業を縮小することもあるという。
事実、四十年以上も続けていたパン製造も打ち切った。
良い商品作りのために、
菓子に技術と職人を集中させるためだ。
和菓子作りは精密機器と同じで、
技術、整備、材料の三要素が優れていて初めて良い結果が出る。
そのため、工場はこの三年間で設備などをすべて新しくした。
働く人が苦労しないように作業関係を改善、
材料の仕入先は良質のものを安定して供給する京都の問屋一本に絞った。
さらに、和菓子作りでは技術日本一といわれる人を講師に招き、
月一回の指導を受けている。
昔の和菓子に戻したい
というのが万通社長の考え。
戦後、
日本の菓子はあんこをまきで炊いて作っていたころと比べ、後退したと指摘する。
自ら品質管理と新製品の開発に当たる。
菓子作りは工芸活動の一分野
菓子工場ではなく、菓子工房にしたい」。
妥協を許さない芸術家の目で、理想を追っている。

<1990年6月 福島民報 朝刊より>